「自宅でできるだけ長く暮らしたい」、「自宅で最期の時と迎えたい」。高齢者へのアンケートではそうした声も多くあがっています。私もそう思っていますし、それが希望です。
しかし、実際は地域における在宅医療・介護の整備状況次第、家族の状況や自身の身体の状況次第だと理解もしています。施設や病院でその時を過ごした方が良い状況であれば、そうできればよいとも私は思っています。
2014年6月、「医療・介護総合確保法」が成立しました。高齢者の介護需要の急激な増加に対応するために制定されたものです。その中で、日本の高齢者の医療・介護のあり方として、「地域包括ケアシステム」の構築を目指すこととしています。
「地域包括ケアシステム」は、2025年を目途に、重度な介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるよう、医療・介護を中心に生活支援が一体的に提供される地域をつくるとしています。そしてこの構築は、地域の自主性や主体性に大きく委ねられています。
地域で暮らし続けることは多くの人にとって理想的なのですが、地域における在宅医療・介護の専門職はもちろん、在宅での生活をサポートする家族や地域の人の協力体制を確保することは、これから整備を進めることを考えても、非常に難しいものです。
この法律に合わせて、介護保険制度の改正も行われ、2015年より要支援1・2の訪問介護と通所介護が全国一律のサービスから、市町村に委ねられることになりました。ご存知でしたか?
市町村に委ねられるということは、市町村の財政状況や取り組み方にサービス内容が大きく左右されることになります。居住する市町村によって受けられるサービス、事業者の質にばらつきが出ることになるのです。
地域格差を解消するために高齢者人口当たりの専門職、サービス提供量、自立支援の成果などにおいて最低限の基準をつくるなど、長期的に維持できる制度にしなければならないと私は考えています。
また、特別養護老人ホームの入所は要介護3(身の回りのことが全てに介助が必要な状態)以上となりました。要介護3までは、原則在宅での介護です。単身高齢者や高齢者夫婦世帯の場合や、在宅医療・介護の困難な住宅の場合、要介護3に近い状態では在宅での生活が非常に困難な場合が想定されます。在宅生活が困難で施設にも入居できない高齢者への確実な支援策が必要です。
栃木県では、高齢者の約16%が要支援・要介護認定者であり、その認定者のうちの約60%が在宅で支援を受けています。高齢者全体の10人に1人が在宅で介護サービスを受けているということです。(高齢者全体なので、高齢者のいる世帯と考えるとまた割合は増加します)
これからさらに増加する高齢者と在宅介護を受ける高齢者を地域は支えられるでしょうか?在宅生活をすすめることは地域の状況に合っているでしょうか?地域の実情を理解した制度になっているでしょうか?
介護が必要になったそのときではなく、長期的に自身の市町村で介護を支えていけるのかを住民も考えていくべきです。
国は、きちんと市区町村で高齢者が暮らせているのか、常に把握することを怠ってはなりません。

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