日本において国民皆年金制度ができて55年、基礎年金制度ができ現在の形になって31年。
今、これまで以上に年金制度の課題が浮き彫りになっています。すでに年金を受けている世代も、将来年金を受け取る世代も不安な制度という印象が強くなってしまいました。
しかし、超高齢化社会において、年金制度自体の必要性は揺るぎないもので、制度の持続と発展を私たちは考えていかねばなりません。

今、高齢者の経済状況をみなさんどれぐらい理解していますか?
人の経済状況なので、実は「よくわからない」人も多いのではないでしょうか?
高齢者のご家族を持つ方も、家族の経済状況を知らない方も多いのではないでしょうか?

まず、高齢者の約8割、5人中4人は、年金収入換算で280万円以下の収入です。
無職単身高齢者の場合の平均は、年間収入は約151万円(うち税金や社会保険料等が約13万円、自由に使えるお金は約138万円)、それに対し、年間支出の平均が約170万円で、預貯金等から年間約33万円を補っているとされています。

無職高齢者夫婦世帯の場合の平均は、年間収入は約261万円(うち税金や社会保険料等が約36万円、自由に使えるお金は約225万円)、それに対し、年間支出の平均が約289万円で、預貯金等から年間約63万円を補っているとされています。

ここまでは全国の高齢者の平均です。国民年金、厚生年金受給者全体の平均ということになります。平均の生活であっても、「年金だけでは生活はできてない」ということです。この収入から住居費(家賃や固定資産)、医療・介護の自己負担分、改正の度に増加する介護保険料などの社会保険料を支出しており、余裕はありません。

さらに、国民年金1号被保険者(自営業者、農業者、一部非正規雇用者)の、平均の月額受給額は5万4544円。
今年、高齢者の生活保護受給者が受給者全体の50%を超えました。年金だけで暮らすことはなかなかできないことです。

栃木県で見ると、高齢者の約3割、10人に3人が低所得高齢者世帯で、非常に厳しい経済状況にあります。65歳以上の単身高齢者の場合、年金も含めた全収入が148万円未満の世帯、高齢者夫婦世帯の場合、192万円未満の世帯です。この収入で生活するのは非常に厳しいことがわかると思います。これで医療・介護、生活のすべてのまかなわなければならないのですから。

つまり、今の制度では、高齢者の最低限の生活が保障されているとは言えません。最低保障年金制度を実現し、高齢者の最低限の生活を保障する仕組みづくりが必要です。
「自助努力」が必要なのも理解しています。将来の備えを自身で行って行くべきなのも当然でしょう。でもそれが叶わない方もいる。突然備えられなくなる人もいます。「共助」の精神を無くすことはできないのです。

給料が上がらず、また雇用が不安定な今の働く世代にとっても、老後をイメージすることは大切です。親世代、そして自分の世代の老後をこれを機に少し具体的にイメージしてみてください。

今の高齢者と同じような老後の状況でしょうか?それとも良くなるか?悪くなるか?

働く世代の厳しい家計状況の中で、老後の備え(貯金もそうですが、住む場所もそうです)ができるような社会の状況でしょうか?若い世代には諦めに近い大きな不安がありますよね。

国民年金の納付率は全体で実質約40%しかありません。さらに25歳~29歳はわずか32%です。これでは、将来の年金制度の破たん、また年金未受給高齢者の増大による社会不安は目に見えています。働く世代にも最低保証年金の制度の確立により、納付を促し、将来の生活破たんを防がなければなりません。この状況でどれほどの人が「自分の老後は不安なし!」と言える備えができるでしょうか。

将来への不安は日々の消費にも影を落とします。年金などの社会保障は国の「負担」ではなく、適切に制度を運営することで、消費・経済にもプラスになるものです。

将来が不安では、栃木に観光に行ってみよう!ともならないですよね。

※実際の老後の懐事情をこっそり教えてくださる方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。

※データ出所:厚生労働省、介護保険事業報告

※写真は高根沢町での集会より

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