TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、日本とアメリカを中心に12か国が参加する経済連携協定です。
経済連携協定とは、特定の国・地域での貿易や投資を促進することを目的にルール作りを行うものです。具体的には、輸出入時にモノにかかる関税を撤廃・軽減したり、サービス業を他国で行う際の規制を緩和したり、他国への投資環境を整備を行います。TPPはその経済連携協定の1つです。
”貿易や投資の促進”なら良いじゃないか。と思う人も多いと思います。が、これは複数の国同士でのルール作りです。日本だけが満足できるルールを作ることはできません。お互いの国に守りたいものがあり、共通のルールを作るために妥協しなければならない点は多くあるのです。また、国の経済、企業の状況は大きく変わるもので、自国が優位だと思っていても、数年後には相手国の方が規模が急拡大したりと優位になっていることもあり、むしろ相手国にとって非常に有利なルールとなってしまうこともあるのです。加えて、この経済連携協定の影響で、別の場面で値上がりや制度改正をするものもあり、協定の影響を広く考える必要があることを、忘れてはいけません。
”日本のルールを受け入れてもらうためには、外国のルールも受け入れなければならない” 。私たちの生活に大きな変化や影響を及ぼすのです。
これまで日本は2か国間や複数国・地域間での経済連携協定を結んでいます。もちろん、その中には、日本にとって非常に良い効果を生んだ協定もあります。
しかし、TPPは工業製品の輸出効果は少なく、かつ「日本の農業と食」を危うくするものです。私はTPPに反対です。TPPの承認は見送るべきだと考えています。
では、TPPのどこが問題なのか?
一番の問題は、国民への説明の不十分さです。協定の内容以外にも影響を及ぼすことを念頭に、企業や国民各々が慎重にその影響を考える必要があります。自国のルールではないので、2年後に「やっぱりやめよう」というわけにはいきませんので。でも国民は協定の内容を理解できていない。
TPPの協定の全文は英文で約8400ページあるとのこと。なぜ8400ページもあるのか?
それは、農産物や工業製品の関税について決めているだけではなく、食品の安全基準や保険や医薬品など、私たちの暮らしを左右する多くの分野で取り決めをしているからです。しかし、国会に日本語訳で提出されているのは2900ページのみ。政府は説明する材料すら提示していない。
これでは、例えば5年後、10年後もこのルールで私たちは本当に良いのか?と考えることすらできません。
農業や食を例に少し考えてみると、
安価な野菜や加工食品の輸入が増え、安く野菜が買えるようになるでしょう。でも、食品の安全基準を他国に合わせることで、世界でもトップクラスの日本の食の安全性は低下するでしょう。安価な野菜に押され、国産の野菜の生産量が低下、国産野菜が値上がりするかもしれません。離農者が増え、国内農業が衰退するかもしれません。国内収穫量が低下する中で、輸入相手国での異常気象や自然災害などによる不作、世界的需要の変化の影響で急に輸入野菜の値段が上がることもあるでしょう。国内農業が衰退した状態では、対応できない場合もあるかもしれないのです。
TPPはまだ利用できる状態(発効)にはなっていません。発効を止めることは「できる」のです。
私たちがTPPを理解し、これからの日本を想像し、判断しなければならない時です。
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